年寄りと侮るなかれ。
「高齢者=食が細い」というイメージを持たれがちですが、実際には驚くほどよく食べる方も少なくありません。
当サイトの調査によると、加齢によって嚥下機能や咀嚼機能が低下し、多少の好みの変化は見られるものの、高齢者でも若者顔負けの食欲も垣間見られました。
高齢者への食事の提供やプレゼントをする際に、この点に気をつけていないと本人の尊厳を気づ付けてしまいかねません。
この記事では、当サイトがウェブなどで調査した高齢者が好きな食べ物をランキング形式で紹介します。
ご両親への贈り物やお世話になった目上の方へのお礼のメニュー選びの参考にどうぞ。
- 高齢者の好きな食べ物ランキング
- 高齢者が好きな食べ物の傾向
シニアは意外にも揚げ物を良く買う
中高年・シニア世代の食生活についての調査によると、意外なことに「揚げ物」を好む傾向が強いことがわかっています。
2015年に日清オイリオグループが実施した「ミドル・シニアの食生活調査(50代~70代男女対象)」によると、最も購入頻度が高いお惣菜は「揚げ物」で、男女ともどの年代でもトップ。購入割合はおよそ70~80%と圧倒的な数字を示しています。
ミドル・シニアの食生活調査(50代~70代男女対象)
- どのような惣菜を購入しますか?
- 購入する惣菜は、男女ともどの年代も「揚げ物」がトップとなり、70~80%程度でした。
- 男性は年代が高くなる程、「ご飯物」が高くなり、一方で「サラダ」が低くなりました。また、女性は年代による変化が見られませんでした。
この調査では、60代・70代では「もう一品欲しい」が最も多い理由でした。
シニアが揚げ物を良く買う理由は味覚の変化
高齢者が揚げ物を良く買う理由として、加齢により味覚が変化することが一因と考えられています。
一般的に加齢と共により味の濃いものを好むようになると考えられている。
日本老年医学会雑誌第57巻第1号:味覚のサイエンス~加齢と味覚の関係~
実際、様々な食品の味強度と嗜好性を比較した研究において、若齢者よりも高齢者の方がより味の濃い食品を好むことが報告されている。
味の濃いものを好むようになる理由として、加齢によって味に対する感度が低下するためだと考えら
れる。
そのため高齢者は、加齢によって味覚が変化し塩味や甘味を感じにくくなるため、しっかりとした味付けの揚げ物を好むようになる傾向があると考えられます。
買った方が作るより割安という考えも
さらに、年代が上がるにつれて「材料を買って作るより割安」という意識も高まる傾向が見られます。
家庭で揚げ物を作る場合、油の処理や匂いの問題、後片付けの手間が大きな負担となりがちなため、「手間を省ける」という利便性から惣菜として購入する人が多いことも理由のひとつと考えられます。
特に、年代が上がるにつれて一世帯当たりの人数が少なくなる傾向もあり、それに伴い家庭で料理をする機会が減少していくことも、こうした背景にあるといえるでしょう。
高齢者施設で行ったアンケートによる高齢者が好きな食べ物ランキング5選
高齢者施設向けに冷凍食品の献立を提供しているクックデリ株式会社が2024年に行ったアンケートによると、以下の5品が人気メニューにランキング入りしています。

お年寄りだから「あっさり」した食べ物を好むかと思いきや、意外にも「カレー」や「ラーメン」が上位にランクインしています。
1位 ポークカレー

ポークカレーはクックデリ株式会社が行った2023年の人気ランキングでも1位を獲得した人気メニュー。
辛味を抑えることで高齢者にも食べやすくなり、「家庭的な味わい」が高齢者の心を打つようです。
2位 醤油ラーメン

麵料理自体の人気がもともと高いのに加えて、特に冬場に温かい一品として多くの方に喜ばれているそうです。
3位 ハンバーグ

高齢者が好んで食べるイメージがあまりありませんが、柔らかく調理されたハンバーグは人気メニューだそうです。
4位 サバの味噌煮

クックデリで人気のある魚料理の中でも、煮魚は特に人気とのことです。
5位 鶏ももの唐揚げ

鶏もも唐揚げは高齢者のみならず、施設のスタッフや社員にも人気の高いメニューだそうです。
高齢者が「最後に」食べたいものランキング
「人生最後に食べたいもの」という視点で高齢者の食の好みを調査した結果も参考になります。
終活や高齢者向けサービスを提供する「ラストメッセージ」の調査(2024年)によると、60代・70代を中心とした高齢者層が「人生最後に食べたいもの」として選んだランキングは以下の通りです。
60代以上の最後に食べたいもランキングTOP5
1位 寿司
2位 焼肉・ステーキ
3位 ラーメン
4位 白ごはん
5位 おにぎり・うなぎ
70代以上の最後に食べたいもランキングTOP5
1位 寿司
2位 焼肉・ステーキ
3位 ラーメン
4位 うなぎ
5位 そば
60代70代:最後に食べたいものランキングまとめ
このランキングからは、60代・70代ともに「うなぎ」「寿司」「すき焼き」といった特別感のあるごちそうメニューが上位を占めていることがわかります。魚介類や和食の定番が強い支持を集めている一方で、ステーキやラーメンといった比較的若い世代にも人気のメニューもランクインしており、高齢者の食の好みは一様ではないことが読み取れます。
また、70代では「おにぎり」が5位に入っているのも特徴的で、食べ慣れた素朴な味への愛着がうかがえます。
これらの結果を参考にすると、高齢者の食事選びでは、過去の食経験や思い出を尊重し、「特別感のある料理」や「食べ慣れた味」を意識することが大切だと言えるでしょう。
90代でも元気な高齢者はうなぎが好き
認知症専門医である長谷川嘉哉先生によると、先生が外来で診察している90歳を過ぎても元気な高齢者のほとんど(9割以上)が「うなぎが好き」と答えているそうです。
長谷川先生は、90代で元気な高齢者の共通点の一つとして「うなぎを食べていること」を挙げており、これが健康維持の一因ではないかと考察しています。
うなぎは元気な体づくりをサポート

うなぎには豊富なタンパク質をはじめ、ビタミンA・B1・B2・D・Eなどのビタミン群や、血管を丈夫にし血液をサラサラにするDHA・EPA、さらにはカルシウムやコラーゲンといった栄養素も含まれています。これらの栄養素は、加齢に伴って失われやすい身体機能をサポートし、元気な体作りを助ける要素として注目されています。
栄養価の高さや「ごちそう感」、食べやすさの人気のポイント
また、うなぎは「100gあたり約293kcal」と、見た目ほど高カロリーではなく、意外とヘルシーな食品であることも特徴です。こうした栄養価の高さや「ごちそう感」、食べやすさが、90代の高齢者からも支持を集める理由の一つでしょう。
90代の高齢者がうなぎを好む理由は、単なる味の好みだけでなく、豊富な栄養素を通じて元気で長生きするための「健康習慣」の一環として根付いていることが背景にあるのかもしれません。
【ここ書き直し】昭和期~平成初期にかけて、うなぎは「スタミナ食」として夏の土用丑の日などに広く食べられてきました。現在の90代は、こうした食文化が根付いた時代を生きてきた世代です。そのため、うなぎに対して「特別なご馳走」「健康食」というイメージを持つ人が多いと考えられます(推測)。
高齢者が好きな食べ物の傾向
これまでの調査結果や専門家の意見を踏まえると、高齢者が好む食べ物には以下のような共通する傾向が見られます。
- 長年親しんできた和食が人気
- 「特別感」のあるごちそうメニューが人気
- 柔らかく食べやすいもの、濃いめの味付け
- 肉料理や揚げ物も意外と人気
- 健康意識と栄養バランス
長年親しんできた和食が人気
お寿司や刺身、煮魚、味噌汁など、昔から食べ慣れてきた和食のメニューが好まれる傾向があります。
これは、家庭の味や日本の食文化への愛着が背景にあると考えられます。また、家族との思い出や季節の行事で食べてきた味が記憶に残り、それが今も「好きな食べ物」として選ばれる理由になっています。
「特別感」のあるごちそうメニューが人気
うなぎ、すき焼き、ステーキといった「特別な日に食べたい」料理が高く評価されています。
これは「特別なものを食べたい」という気持ちが強いことに加え、うなぎは豊富な栄養素を含み、健康維持のイメージも強いため選ばれる理由となっています。人生最後に食べたいものランキングでも上位を占めることが多く、長年の食の記憶やごちそう感が好まれる背景となっています。
柔らかく食べやすいもの、濃いめの味付け
高齢になると噛む力や飲み込む力が衰えるため、煮込み料理や柔らかい食材が選ばれやすくなります。
また、加齢により味覚が鈍くなるため、塩味や旨味がはっきりした濃い味付けの料理を好む方も多いです。味付けの濃さが満足感につながり、「美味しい」と感じる基準にも影響しているようです。
肉料理や揚げ物も意外と人気
高齢者だからといってあっさりした和食ばかりを好むわけではありません。
カレー、ハンバーグ、唐揚げ、ラーメンといったボリューム感のあるメニューや、スーパーやコンビニで揚げ物惣菜を買い求める姿も多く見られます。揚げ物は家庭で作る手間を考えると買って済ませたいという需要もあり、特に高齢世帯ではその傾向が強いようです。
健康意識と栄養バランス
高齢者には「元気でいたい」「健康を保ちたい」という意識が見られます。
うなぎに代表されるように、タンパク質やビタミン、DHA・EPAなど栄養豊富な食材を積極的に選ぶ方も多く、90歳を超える高齢者でもうなぎなどの栄養価の高い食材を積極的に摂る習慣が見られることが、健康寿命の延伸に貢献している可能性が考えられています。
これらの傾向から分かるのは、「高齢者の好きな食べ物=柔らかい、あっさりした和食」だけではないということ。過去の食経験や思い出、家庭の味を大切にしつつ、「おいしいものを食べたい」「特別感を味わいたい」という気持ちを持っている方が多いことが、高齢者の食の好みに影響しているのです。
高齢者の好きな食べ物を知るためには、過去の食生活を聞いてみるのがおすすめ
高齢者が好きな食べ物を知るためには、その人がこれまでの人生でどんな食事をしてきたかを知ることがとても大切です。幼少期や若い頃に食べていた家庭料理、外食でよく選んだメニュー、季節ごとの行事食や特別な日のごちそうなど、長年の食経験は今の食の好みに大きな影響を与えています。
例えば、「昔はお寿司をよく食べに行っていた」「家では煮魚が多かった」「家族で天ぷらを囲んだ思い出がある」などのエピソードは、好きな食べ物を知る手がかりになります。高齢者の食事の好みを理解するためには、こうした思い出話に耳を傾け、その人ならではの食の歴史を尊重することが大切です。
「何が好き?」と尋ねるだけでなく、「昔よく食べていたものは?」「特別な日に食べた料理は?」と掘り下げて聞くことで、より具体的な好みを把握でき、ランキングに挙がるような人気メニューの中から、その人に合った食事を選ぶヒントにもなります。
高齢者が好きな食べ物番外編
五目チラシ・炒り卵と炒りひき肉の2食丼・うどん・すき焼き風煮物・フルーツゼリー・ようかん・杏仁豆腐・カステラ・黒糖蒸しパン・アイスクリーム・ケーキ・シュークリーム・果物・ネギトロ
→口当たりが柔らかいもの、甘めのものが人気
白玉あずき・かりんとう・醤油せんべい・天ぷら
→一口サイズにするなど、工夫をして食べやすくする。高齢になると固いものが食べられなくなるので、喜ばれる。
高齢者にとって「食べやすさ」は、味や見た目と並んで非常に重要なポイントです。年齢とともに噛む力や飲み込む力が弱くなることで、固いものやパサついた料理が食べにくくなる傾向が見られます。
しかし
食べにくくて食べられないと
嫌いで食べたくない
は、まったくの別物。
固めの食べ物でも、食べやすい工夫をすることで、高齢者から喜ばれる食事を提供することができます。
高齢者は栄養が不足しがち?
高齢になると食事の量や種類が限られてしまうことも多く、必要な栄養素を十分に摂取できていないケースが見られます。特に独居の高齢者や食が細くなった方は、知らず知らずのうちに栄養不足に陥るリスクがあります。
栄養が不足しがちな原因
高齢者の栄養不足には、以下のような原因が挙げられます。
- 食欲の低下:加齢による代謝の低下や病気、薬の副作用によって食欲が減少。
- 咀嚼・嚥下機能の低下:固いものや噛みごたえのある食材を避ける傾向があり、食事のバランスが偏りがち。
- 調理の手間:一人暮らしや体力の低下によって、自炊が困難になり、簡単な食事で済ませることが増える。
- 栄養知識の不足:必要な栄養素を把握しておらず、栄養バランスを意識した食事ができない。
これらが重なることで、たんぱく質、ビタミン、カルシウム、鉄分などの重要な栄養素が慢性的に不足してしまう可能性があります。
家庭でサポートできる対処法や予防法
家族や周囲のサポートによって、栄養不足を予防することが可能です。
- 調理の工夫:柔らかく調理したり、ミンチやペースト状にするなど、食べやすい形にして提供。
- 栄養補助食品の活用:ゼリータイプやドリンクタイプの補助食品を取り入れる。
- たんぱく質の強化:豆腐や卵、魚、鶏肉など、消化が良くたんぱく質を多く含む食品を取り入れる。
- 食事を楽しめる環境作り:一緒に食事をする時間を設け、心理的な満足感を高める。
- 宅食サービスの利用:バランスのとれた食事を手軽に摂取できる選択肢として活用。
高齢者の健康を守るためには、無理のない範囲での工夫と、周囲の適切な支援が欠かせません。
高齢者におすすめの宅食サービス
高齢者におすすめの宅食サービス
高齢者向けの宅食サービスは、栄養バランスが整ったメニューや食べやすさを考慮した調理が特徴で、自宅で手軽に健康的な食事を取る手段として注目されています。ここでは、おすすめの宅食サービスを3つ紹介します。
まごころケア食

「まごころケア食」は、一般の方だけではなく、高齢者にも寄り添った商品ラインナップが魅力です。
管理栄養士監修のもと、栄養バランスやカロリー制限に配慮したコースが多数あり、咀嚼や嚥下が気になる方でも安心して食べられるやわらか食も展開しています。定期配送やまとめ買いもできるため、家族の負担軽減にもつながります。
コースは全8種類から選択可能。

初回限定セットを利用することで1食190円で利用できるなどコスパの良さも魅力的です。
▶まごころケア食の公式サイトを確認
ウェルネスダイニング

「ウェルネスダイニング」は、塩分・カロリー・たんぱく質などの調整が必要な方でも食べられるように、専門栄養士がメニュー設計を行う宅配食サービスです。
高齢者向けには「やわらか宅配食」や「栄養バランス気配り宅配食」などのコースがあり、健康状態や生活スタイルに合わせて選べるのが魅力です。
コースは全13種類という充実ぶり!
さっぱりした味付けで、濃い味が苦手な方に食べやすい設計となっています。
▶ウェルネスダイニングの公式サイトを確認
ミールズ

「ミールズ」は、レシピメディアであるデリッシュキッチンプロデュースの冷凍宅配弁当サービスです。
ミールズの強みは
徹底した栄養バランスへのこだわり
塩分量・脂質・たんぱく質・糖質など、8項目の基準を設け、他の冷凍宅配弁当サービスにはない、バランスの良いメニューを提供しています。
他の宅配弁当サービスとは一線を画する栄養バランスに対するこだわりは、老若男女問わず心強い味方です。
※ただし嚥下機能が低下した方向けのラインナップはないので、高齢者には注意が必要です。
▶ミールズの公式サイトを確認
高齢者の好きな食べ物ランキング:まとめ
高齢者が好む食べ物は一様ではなく、過去の食体験や健康状態、生活環境によって多様性があります。
調査結果から見えてきたのは、必ずしも「あっさり・柔らかいもの」だけが好まれるわけではなく、「味の濃い料理」や「ごちそう感のあるメニュー」も人気があるということです。
- 思い出や好みに寄り添う
- 食べやすさ・安心感を考慮する
- ごちそう感のあるメニューも喜ばれる
- 高齢者は薄味という概念を捨てる
栄養バランスを考えつつ、その人の好みに合った食事を選ぶことで、高齢者の生活の質(QOL)を高めることができるでしょう。
高齢のご家族やお世話になった方への食事選びに、ぜひ今回のランキングや傾向を参考にしてください。